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平成12年9月号

・遠藤周作の代表作「沈黙」の舞台に誘われて...
・感動がこころを育てる
・「伊万里の文学」展開催
・黒澤学 vol.3  黒澤明と芥川龍之介
・図書館で住民票などが受け取れます
・トンテントン秋祭り将棋大会
・図書館フレンズいまり 5周年記念講演会

★1面

 遠藤周作の代表作「沈黙」の舞台に誘われて、外海町出津教会を訪ねました。
 キリスト教弾圧から解放されたばかりの外海地方で、信仰を説き、 貧しい暮らしの救済をしたフランス人司祭ド・ロ神父の設計だというのです。
 教会は五島灘を眼下に見下す高台にあり、屋根は切妻、周囲を白いしっくいで仕上げられ、 100年の歳月を経た今も健在でした。内部は6本ずつの柱が2列に並んでいて、 天井はわずかに上方に反った曲面をもつ平天井でした。 祈祷机には何世代にも渡ってひざまづいた人のくぼみが、心なしか残っているような気さえしました。 誰もいない質素な作りの教会にたたずみ、ここでいく千人の人が自分自身と向かい合ったのだろうと 思わず衿を正してしまいました。と同時に思うのは伊万里市民図書館のことでした。

 「明るい図書館ですね」
 「入ったら包み込まれるようなやさしさです」
 「座り込んで本を読みたい場所がたくさんありますね」

 オープンしたとき、図書館を初めて訪れた人から聞いた言葉です。
 あれから5年の歳月が流れました。
 伊万里の図書館は出津教会の黒光りに少しでも近づいているかしら・・・自問自答しながら 思わず祭壇に向かって一礼をした夏の1日でした。

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★2面(1)
[感動がこころを育てる]

 8月26日に伊万里市民図書館で「先生、本を読んで!」の著者である村上淳子さんの講演を聴きました。 小中学校の教師として、38年にわたり本の読み聞かせをした体験を話してくださいました。

 読み聞かせを始められたきっかけは、ただ自分自身が本が好きだったという理由だけだったそうですが、 読み聞かせを続けることによって子ども達とのよい関係をつくることができたことや 子ども達がよい方向に変わったことなどの結果が得られたということでした。 例えば、落ち着きがでてきた、理解力が向上した、生活態度がよくなった、集中力がアップした、 人の話をよく聞くことができるようになった、学力が向上したなど、たくさんありました。 また問題行動がある子どもでも本の読み聞かせの時間を楽しみにしていたと言われました。 本と関係がないようですが、部活動も強くなったそうです。読み聞かせは、幼児や小学生だけではなく、 中学生や高校生でも効果があるということでした。
 最後に「ゆずちゃん」という本を読んでくださいましたが、心にしみるものがありました。 やはり本というものは、心と心を触れ合わせ、心を育てるものなのだと改めて思いました。
 子ども達を本を好きにするためには、まず、学校の先生や保護者が本を好きになること。 そして、学校で、担任の先生が、週に1回でも2回でも子ども達に本の読み聞かせをして、 本に触れるきっかけ作りをすることが大切だということでした。

 本で大人と子どもの心が触れ合うことができて、楽しい時間を共有できるのですから、 「みなさん、本を読んで!」
(藤田直子 記)

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★2面(2)
[「伊万里の文学」展開催]

 伊万里の地は古くから優れた作家を生み出してきました。 また、井上光晴や吉川英治などの著名な作家が、伊万里を舞台にした作品を書いています。

 伊万里出身の詩人片岡繁男氏は「わがふるさと伊万里」のなかで、
  この山河… 伊万里よ  ふるさとに 光は溢れ  ひとびとの歌声 あふれ
と詠っています。
 そこで新しい世紀を前に、私たちの祖先が築いてきた「伊万里の文学」を振り返り、 これからの伊万里を考える一助となるよう、作品を一堂に集めて「伊万里の文学」展を開催いたします。
 また資料の展示に併せて、講演会を開催いたします。
 ぜひこの機会に地元伊万里のすばらしい作品をご覧ください。

 ◆資料の展示
 ・期間
   10月20日(金)から11月3日(金)まで
 ・場所
   市民図書館  企画展示室、展示コーナーA・B・C、和室
   (ただし和室の展示は10月27日から11月3日まで)
 ・おもな展示作品
   森永杉洞・中島哀浪・中原勇夫・片岡繁男各氏の作品

 ◆講演会
 ・日時
   10月28日(土)午後1時30分から
 ・場所
   市民図書館  ホール
 ・講師
   池田賢士郎さん(文学研究科・佐賀市在住)
 ・演題
   「近くて遠ーい文学のこと」―「伊万里の文学」展に思う

 ※入場無料です。

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★3面(1)
[黒澤学 vol.3  黒澤明と芥川龍之介]

 日本の映画監督の中で、黒澤ほど古今東西の文学を猟渉した人もいない。
 それが彼の多彩な作品群に結実しているのは言うまでもないことだが、今回は視点を変え、 黒澤が文学作品の映画化に当たり、その原作をどう改変し、彼自身のものとしたかについて、 映画「羅生門」を例に論じることにしたい。
 原作は一応、芥川龍之介の『藪の中』となっているが、映画「羅生門」は、 『藪の中』での話を、『羅生門』に雨宿りする3人(杣売、旅法師、下人)で検証する形で進められる。 つまり、映画は2つの異なった小説を融合したものとなっている。
 『藪の中』の話は、事件を共有する3人が3人とも、自分達に都合のいい証言をして、 何が本当なのか判らなくなるという、いわば人間不信で終わる物語で、芥川の懐疑的な人間観を反映している。
 これに反し映画では、事件の一部始終を目撃した杣売の話を加え、何が本当にあったかを明らかにして、 3人の恣意的証言を覆すのだが、客観的真実をもたらしたはずの杣売も、実は嘘をついていることを、 下人に見透かされ、もっと深い懐疑的暗闇に落とし込まれる。
 実は、ここからが黒澤の真骨頂で、捨てられた赤ん坊の産着を剥ごうとする下人の悪行に、 人としての心を呼び覚まされた杣売は、赤ん坊を奪い返し、自分が育てる決心をするという、 ヒューマンな形で映画「羅生門」は終わる。そこで思い出してもらいたいのが、芥川の『羅生門』の最後の件り。 善にも悪にも徹しきれず、迷っていた下人が、死人の髪の毛を抜く老婆の悪行を目の当たりにして、 追剥という自分の行為を正当化し、悪への道を辿ることとなる。
 このように、芥川では人間不信であったものが、黒澤では人間信頼の話へと、 いわば原作の趣旨が全く転倒されている。
 つまり、黒澤は原作に忠実な再現など眼中になく、飽くまでも自分の芸術を実現するために、 原作を借りたと言える。
 芥川は、文学的想像力で平安時代の『今昔物語』から『藪の中』や『羅生門』を生み出し、 黒澤はその『藪の中』や『羅生門』から映画的想像力で映画「羅生門」を生み出している。 黒澤の「羅生門」が、芥川と違うもう一つの『羅生門』と呼ばれる所以である。

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★3面(2)
[図書館で住民票などが受け取れます]

 市民図書館では、7月から住民票などの交付を始めました。 あらかじめ市役所・市民課へ申し込んでおけば、図書館の開館中に受け取ることができます。

 ☆図書館で交付できるもの
  ・住民票の写し
  ・印鑑登録証明
 ☆市役所・市民課の受付時間
  月曜日から金曜日の午前8時半から午後5時
 ☆図書館での受け取り期間
  申し込みをした当日の午後4時から、1週間以内

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★4面(1)
[トンテントン秋祭り将棋大会]

 間もなく、伊万里の秋祭り・トンテントンの季節がやってきます。
 今年で7回目を迎える秋祭り将棋大会。昨年に続き、市民図書館を会場に開催します。
 みなさん、ふるってご参加ください。(大人でも子どもでも参加できます。)

 ☆日時 10月22日(日)午前9時30分から
 ☆場所 伊万里市民図書館ホール
 ☆お問い合わせ先 日本将棋連盟伊万里支部
           電話23-8088
 主催:日本将棋連盟伊万里支部

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★4面(2)
[図書館フレンズいまり 5周年記念講演会]

 図書館フレンズいまりが発足してから5年。 これを記念して、元館長の森田一雄さんによる講演会を開催します。 図書館フレンズの会員の方も、そうでない方も、図書館が大好きな皆さんにぜひ聴いていただきたいお話です。 多数のご来場をお待ちしております。

 ◆日時 9月30日(土)午後1時30分から
 ◆場所 市民図書館ホール
 ◆講師 森田一雄さん(元伊万里市民図書館館長)
 ◆演題 「序章・私たちの図書館」

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