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平成12年12月号
・最近は地球温暖化のため...
・「詩を書くこと生きること」石垣りんさん講演会
・【黒澤学 vol.6 黒澤明と増村保造】
・子どもの読書親の役割 ~ 渡辺順子さん講演会~
・みんなの図書館~つかい方
・寄贈 ありがとうございました
・年末・年始休館日のお知らせ

★1面

 最近は地球温暖化のため、寒さもそれほど厳しくなく、季節感も薄れがちなのですが、 さすがに年末を迎えるとなると、様々な感慨が去来するかと思います。
 邦画全盛時代はオールキャストによる「忠臣蔵」、高度成長期を経てからは市民参加型の「第九の演奏会」、 あるいは戦後一貫しては大晦日の「紅白歌合戦」と、節目を大切にする生活習慣が身についている日本人には、 12月の恒例行事と呼ばれるものがありました。
 特に今年は、20世紀最後の年ということもあり、さまざまなミレニアム事業が通年で目白押しでした。  図書館でも6月に絵本学会の全国大会を催したのですが、 本年度の掉尾を飾る企画として、「20世紀の(各分野で活躍した)巨人たち」と 「20世紀の記憶~1年1作でたどる日本文学百年の軌跡」と題して、 私たちの生きたこの20世紀を回顧する展示をしております。
 何かと慌ただしい年末ですが、新しい世紀を迎えるに当たり、 戦争と平和、絶望と希望が交錯した激動の20世紀に、大きな足跡を残した巨人たちの記録を読んだり、 日本近代文学100年100冊の中から、自分の思い出深い年の傑作を読んで、 その時代のあり様や自分の来し方に想いをいたすのも、読書の醍醐味かと思います。
   市民図書館も誕生して5年、これまでの皆様方のご厚情に感謝申し上げますと共に、 来る21世紀も「伊万里をつくり 市民とともにそだつ 市民の図書館」をモットーに、 伊万里市民の文化生活の拠り所として、さらなる発展を期したいと思っておりますので、 よろしくお願い申し上げて、年末のご挨拶といたします。

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★2面(1)
「詩を書くこと生きること」石垣りんさん講演会

 12月3日、日本を代表する女流詩人石垣りんさんの講演会が市民図書館ホールで開かれました。 市内はもとより福岡、長崎、熊本などからおよそ160人が詩の世界を堪能しました。
 石垣さんは80歳になる現在まで一貫して詩を書き続け、 昭和43年にH氏賞、46年に田村俊子賞を受賞、 今年3月には詩集「表札など」が32年ぶりに復刊され、今一番話題の詩人です。

 講演は、20代、30代、40代とそれぞれの節目に書いた詩を朗読されながら、 「祖父や母から形にはならない言葉の贈り物をもらって気ままに詩を書いてきました。」 「その時々に夢中で書いてきた詩が、私の履歴書になっています。」 「詩を書くことは、体のなかにあって形を成していないどろどろしたものを再認識することであり、 自分の頭で考えて、自分の言葉で書くことが必要です。」と体験することの貴重さを語られました。 また「その人にとって本当に優しい言葉が、どんなにかむごい立場を引き起こすこともある。 しかしうわべだけ優しい言葉が氾濫してはいないか、本当に言うべき言葉を 私たちは控えてしまっているのではないかと按じられる。」と現代の社会に対する憂いを述べられました。 そして詩作の難しさを「自分の出した言葉は、雪のように自分に重しとなってのしかかってきます。」 「私は太鼓の様なもので、事物が私に働きかけたときにやっと歌いだせる。 しかし、太鼓は叩かれればいつでも音を出すけれど、 詩を書く時はいつも心を張りつめていなければ音は出ません。」と話され、 「詩は生み出すものであって、拵え事や大量生産で作るものでは本当に心に届く詩は出来ないのではないか。」 と結ばれました。

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★2面(2)
【黒澤学 vol.6 黒澤明と増村保造】

 早すぎた天才、故増村保造監督は、「黒澤はなぜ巨匠か?」と問いかけ、 「抜群の表現力」と、それに奇妙に反するようだがと断りながら、 「その思想の通俗性」を挙げている。
 映画が視聴覚の芸術であり、大衆の芸術である以上、この相反する2つの条件を満たすことが、 巨匠の巨匠と呼ばれる所以である。
 つまり、映像による表現は一流の才気と迫力に満ち、 他方、描こうとする思想やテーマは充分に大衆的で普遍的でなければならない。
 黒澤はこの2つの条件を完全に具現している、と。
 「抜群の表現力」とは、複数のカメラを同時に使用するマルチ・カメラ方式による撮影方法であり、 望遠レンズを多用しての画面の絵画的美しさをいっている。
 また、「その思想の通俗性」とは、男性的な正義感に基づくストーリー展開と 登場人物の善人ぶりに伺われる。 つまり、黒澤の理念を体現した主人公は、様々な困難に遭遇するも、 最終的にはその逞しい戦闘力を発揮し、悪党や社会悪と敢然と戦うことになる。
 黒澤作品のシンボル的存在である三船敏郎が、所狭しと活躍するアクション映画が、 黒澤映画の醍醐味だ、と。
 しかし、これらの長所が、現代のように社会が複雑になり、明快性を欠くようになると、 そのまま短所に転ずるとも言っている。
 言い換えれば、現代を生きる私たちにとって、黒澤流の男性的な正義感に基づくストーリー展開では、 人間らしいリアリティを欠き、共感を得がたくなるのではないか。
 増村保造は、黒澤の本質を見事に見抜いていたのである。

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★3面(1)
子どもの読書親の役割 ~ 渡辺順子さん講演会~

 渡辺さんのお話を拝聴しながら、孫の誕生を祝って贈っていただいた 数冊の本のことを思い出しました。 リボンのかかった包みの中には「松谷みよ子あかちゃんの本シリーズ」が入っていました。 新米ママもばあばもこれらの本といっしょにどれだけ百面相を繰り返したでしょう。 「いないいないばあ」のことばをおぼえ、いいお顔をつくり、毎日があっという間に過ぎました。 また、離乳食の頃、「あかちゃんずかん・やさい」(わらべきみか/作)に出会いました。 「にんじん・きゅうり・とまと…」と言いながら匙を口に持っていきました。 紙の絵本は、歯の生えはじめといっしょになり、よだれと共にぼろぼろになっていきました。 ここでばあばの出番がでてきたのです。 スカートや息子の古服、和服の残り布あらゆるものが絵本の絵に変身しました。 破けることもなく、それこそ世界に1冊しかない絵本が出来上がりました。
 「布の絵本は、本の役割と遊具の役割を統合して持つ新しい文化といえるでしょう。 紙の本のように破れる心配もなく、布の持つやさしさや暖かさの上に、 ひとはり一針縫ってくれた人のぬくもりも伝わってくる世界をも持っています」と 渡辺さんはおっしゃっています。
 赤ちゃんは、このような絵本・布絵本・遊具と出会い、見たりさわったりしながら、 耳のそばで繰り返し聞く言葉で、泣いたり、笑ったり、かた言で語り始めるのです。
 この「ブックスタート」の大切なことを先輩として若いお母さん方にお伝えすることは 大事なことだと強く思いました。 また、渡辺さんも繰り返しお話しなさるように、よい本との出会いを常に考えておくべきです。
 「てんとう虫の家」は、子どもたちの健やかで安全な育ちを願って 布による手づくりの絵本や遊具をもっと広める工夫もしていかなければなりません。 ただ布遊びを楽しむというだけでなく、これから未来に向かっていく子どもたちとも 真剣に向かい合い「読書のよろこび」を伝えていくための橋渡しのお手伝いをする努力を これからもしていきたいと思いました。
(てんとう虫の家・前山ノブ)
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★3面(2)
みんなの図書館~つかい方

 こんな投書がありました。

「子どもを連れて図書館に行きました。とても楽しそうでしたが、 たまに大声をあげるので職員に叱られ、大泣きしました。図書館は行きづらい場です。」  図書館は赤ちゃんから高齢者まで利用するところ。 その使い方を市民のみなさん自身で考えてほしいと訴えたところ、 次のような意見がありました。

「たいへん利用しやすい建物ができているのに、高い声で話している人が多い。 これではせっかくの建物が泣いてしまう。 関係者はもう少し努力をしてほしい。」
 「公共のスペースです。 私も学生の大声や子どもの走り回って他人を省みない態度にはムッときます。 大人(特に親)がここは本を読む所だと、マナーをも教えていく場ととらえては。」

 図書館協議会でも議論してもらいました。
 「マナーはみんなで教えあいましょう。」
 立場が違えば言い分もそれぞれ違います。 しかし、「市民の図書館」であるために職員の努力はもちろんのこと、 市民のみなさんで人を、そして図書館を育ててほしいと願っています。

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★4面(1)
寄贈 ありがとうございました

(敬称略)
中嶋忠義
井本勝利
山口真由美
土谷ヒサコ
山本春男
荒木康男
田雑勲
高田通子
鴨川卓
伊万里市郷土研究会
有田町教育委員会
多久市長

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★4面(2)
年末・年始休館日のお知らせ

 市民図書館の年末・年始の休館日をお知らせします。 図書館の休館日は、

 12月28日(木)~1月3日(水)

 1月4日からは通常どおり開館します。
 また、《ぶっくん》の巡回も12月28日から1月3日までお休みします。 巡回の開始は来年1月4日からです。
 休館中の図書の返却は、ブックポストをご利用下さい。 また、CD・ビデオ・カセットテープのブックポストへの返却は、 破損のおそれがあります。開館時に、デスクまでお返し下さい。
 休館中は何かとご迷惑をおかけします。 来年も、今年以上にご利用下さいますようお願いいたします。

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