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平成14年冬号

・虚像を斬る 最後の判決書
・伊万里の文学展 ~片岡繁男の世界~
・子どもの読書活動推進法公布 ~本を読むまち・伊万里~
・おはなしキャラバン ブックスタートへの取り組み
・ブックスタートをはじめよう! 子どもは言葉で育つ!(お知らせ)
・年末年始休館のお知らせ
・第5回 伊万里市民図書館子ども将棋大会(お知らせ)

★ 1面
虚像を斬る 山形道文弁護士講演会

 戦後の食糧難の時代、佐賀県出身の山口良忠判事は「われは裁判官、餓えてもヤミ米を食わず」と法に殉じました。亡くなったのは33歳という若さでした。当時、このニュースは日本中を駆け巡りましたが、崇高な死だ、いや犬死だ、つくられた美談だと世論はあい半ばしました。
 これに対して事実は証拠に基づいて語られなければならないと、多数の資料を収集し、聞き取りに歩いた人がいました。この人は北海道函館市の弁護士山形道文さんです。山形さんはこのことを『われ判事の職にあり』という本にまとめ、1982年文藝春秋から出版されました。

 山口判事が亡くなってから今年で55年、出身地の白石町では「没後55年祭」がおこなわれましたが、伊万里市民図書館では山形さんの講演会と取材資料のドキュメント展を開催しました。最後の判決文、判事が特別配給を辞退したという書記官の証言、佐賀高等学校時代の写真など初公開の資料約60点が展示され人々の目を引きました。講演は「虚像を斬る」というテーマ。山形さんは「判決文などから見ても判事は決して冷酷な人ではなく、穏やかな人柄の美しく生きた人でした」と話されました。

 今は飢餓など夢想だにできない飽食の時代である反面モラルの低下は地をはらい、新しい世紀の展望など見えないと嘆かれています。そんな中での講演会でしたが聞いている人はみな真剣に深くうなずいていました。郷土の先人の教えを学びそれに近づくことこそ伊万里学であり伊万里市民図書館の目ざすものでもあります。
「帰りきてふるさとの空かくばかり青かりしとは知らざりしかな」これは山口良忠判事の辞世の句です。

最後の判決書
 昭和22年9月1日付判決
 山口判事が、細りゆく命をふりしぼり、この世に残した自筆の最後の判決書は、なんと電車内でハガキ1枚を盗んでという単純な窃盗事件に対するものであった。
 この判決でも刑を猶予していた。
 判決の日付や裁判官署名の筆先が震え、日ごろの達筆さが、影をひそめている。重い栄養失調になっていた。

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★ 2面
伊万里の文学展 ~片岡繁男の世界~

 10月初旬、伊万里市民図書館から一通の葉書が届いた。それは、10月26日開催の「片岡繁男の文学の世界を語る会」の案内状だった。東京在住の片岡繁男先生の文学の足跡を追い、そして世に問いかけ、郷土が生んだ偉大な作家を賞賛しようという企画だった。私は嬉しかった。

 そして追い打ちをかけるように先生から書状が届いた。それは便箋8枚にわたる長い便りで、犬山宅にある片岡先生から頂戴した真筆の書、色紙等の品を図書館に運搬して欲しいとの事であった。早速、私が選んだのは、座敷の欄間に掲げている額、「こでまり…」を含め、数点の品々であった。それにしてもこういう企画を知らずに居た自分の迂闊さを思い知らされ反省したことだった。

 先生と私との文学のつき合いは、50数年になる。終戦直後の混乱期に、軍隊の学校から帰宅を命ぜられ、そのまま空ろな日々を送っていた時「私の家に来てみませんか。」と声をかけ手をさしのべて下さったのが先生である。当時、人生の目標と、生きる術を失った私に、文学という新しい分野を示し与えて下さり、道しるべを示して頂いた片岡先生との師弟の関係は、すでに半世紀以上になった。

 先生の誕生日の日にちなんだ「十三日会」の同人会には、発足当時からの同人である井手和
夫氏、野田行雄氏、高田文利氏、そして私、その後メンバーとして前田和茂氏、靉頒恵(光永よう子さん)女史、前田孝子女史が参加され、現在も毎月開催されている。かつては野田家と拙宅とで会場を受け持ち深夜まで文学論を語り、闘わせたことだった。

 片岡先生が帰伊された時は、十三日会同人一同、先生の奥様のご実家、夏秋医院に集まり、これまた文学論から哲学、宗教に至るまで幅広いジャンルの論説を拝聴し、歯科医であり、詩人であり、作家である先生の奥の深さに傾倒し、時の経つのも忘れる程で、星を仰ぎながらの帰宅だった。

 今私は、檀家寺の総代を勤めさせて頂いているが、朝夕の仏壇の読経の度に、先生が熱く語られた禅の道と悟りを思い出すのである。近著「片岡繁男のあゆみ」の1ページに、ご自分の今後の人生の道しるべとして「回光返照」の言葉が記されている。語る会でのビデオ映写の際も、大写しの先生の最後のお言葉として、この回光返照を会場の皆さん方に語りかけて居られた。

 会終了後、帰宅一番に東京の先生宅に電話を入れた。
「すばらしい会でした。先生のお元気なお顔を拝見し、大変なつかしく思いました。」
「私も襟を正して、その時間帯を過ごしました。」
とのお返事だった。

 伊万里の大いなる詩人、文学者の片岡先生の会が盛会裡に終了したのも、ひとえに犬塚まゆみ館長様はじめ、館員の皆々様の大変なご苦労の賜と推察し、私のことのように思った次第である。

 伊万里をこよなく愛し、切々とした心情を詩に、文章に託される先生のご健勝を切に祈る次第である。
(立花町 犬山國博さん)

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★3面(1)
子ども読書活動推進法公布 ~本を読むまち・伊万里~

 覚えていますか?2000年が「子ども読書年」だったことを。当時、日本各地では子どもの読書に対する行事が数多く行われました。国は「子ども読書年を2000年だけで終わらせてはならない」という、多くの国民の声に応えるため、このほど法律を作りました。
 それが「子どもの読書活動推進法」です。平成13年12月に公布されたこの法律は「すべての子どもが、あらゆる機会とあらゆる場所において自主的に読書活動を行うことのできる環境の整備」を基本理念としています。
 国は子どもの読書を支援するため学校図書館整備計画で1993年度からこれまでに約900億円を地方交付税として投入してきました。また国際子ども図書館の開設や学校図書館法の改正、子どもゆめ基金の創設をし、この8月には「子どもの読書活動推進基本計画」を策定公表しています。
 このような追い風のときにこそ、子どもを取り巻く全ての人が、伊万里の子どもの読書環境について考えていきたいものです。
 読書は長期展望に立った人づくりです。

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★ 3面(2)
おはなしキャラバン ブックスタートへの取り組み

 私たち「伊万里おはなしキャラバン」は3月に伊藤忠財団から助成金をいただきました。これは、「ブックスタートについての勉強」に活用することを目的としてのものです。そこで、6月にはまず「ブックスタート」とは何かを学ぶことから始めたいと、佐藤いづみさん(NPOブックスタート支援センター企画主任)を迎えて講演会を開催しました。その時、実際にブックスタートが行われている例として、北海道恵庭市の様子が紹介されました。図書館と保健所とボランティアの三者が足並みを揃えての活動です。先進地としてのよい例でありました。現実の状況はどんな様子だろうか、北海道を訪ねるには遠いけど、と思っていたところに、恵庭市立図書館の司書・辻和代さんが小郡市の図書館に講演に来られることを知りました。伊万里にも?との依頼に快諾されて、10月11日に勉強会の運びとなりました。県内はもとより近隣の町からの参加もありました。その中にはすでにブックスタートを実施している市町もあり、いろいろな質問が出ました。辻さんからは、実際に立ち上げるまでの思うようにはいかない状況や苦労話もありましたが、恵庭市が現在のようなよい形になっているのはやはりスタッフの熱意があってこそだと思いました。また、行政からも予算が組み込まれており、しっかりと「ブックスタート」が恵庭市に根付いていきつつあることを感じさせるさわやかな
辻さんの笑顔でした。

(おはなしキャラバン・持永由美子)
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★ 4面(1)
ブックスタートをはじめよう! 子どもは言葉で育つ!

 絵本研究者の松居直氏をお迎えして、講演会を開催します。絵本の編集に携わってこられた観点から、絵本の魅力や絵本の持つ言葉の世界などについて語っていただきます。皆様のご参加をお待ちしています。

 《講師プロフィール》
 松居 直 氏 (まつい ただし)
  ・1926年 京都生まれ
  ・編集者、絵本研究者
  ・著書 『絵本とはなにか』『絵本を見る目』 など他多数
  ・現在、福音館書店会長、NPOブックスタート支援センター理事長
日時 : 11月30日(土) 13:30~15:30
場所 : 市民図書館ホール

主催 : 伊万里おはなしキャラバン
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★ 4面(2)
年末・年始休館のお知らせ

 図書館の休館日は

 12月28日(土)~1月3日(金)

 1月4日(土)からは通常どおり開館します。
 また、ぶっくんの巡回は12月28日から1月6日までお休みします。巡回開始は来年1月7日からです。
 休館中の図書の返却は、ブックポストをご利用ください。また、CD・ビデオ等につきましては、破損のおそれがありますので、開館時にデスクまでお返しください。
 休館中は何かとご迷惑をおかけしますが、新年も今年以上にご利用くださいますようお願いいたします。

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★4面(3)
第5回 伊万里市民図書館子ども将棋大会

 11月3日(文化の日)に開催。38名の子ども達の熱戦が繰り広げられました。
 入賞は次のとおり。
☆有段クラス  1位  河原靖君(啓成中3年)
☆上級クラス  1位  松尾尚君(東登川小5年)
☆中級クラス  1位  新久田清人君(南波多小4年)
☆初級クラス  1位  田中惟央吏君(伊万里小6年)

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