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No.369 平成18年11月
『美酒酔楽・飲めば天国』 『ハヅキさんのこと』
『世界の名酒辞典』編集部/編  講談社

 毎年、秋に出される『世界名酒辞典』に掲載されたお酒にまつわるエッセイや薀蓄、はたまた酒論などユニークな読み物が、一冊になりました。
 阿川弘之と開高健の酒対談。埴谷雄高が甘いワインを好きだったわけ。北方謙三のバーカウンターでの薀蓄披露の数々。
 お酒にまつわる、楽しい読み物が満載です。

 (Y・M)
川上弘美/著  講談社

 ハヅキさんは、以前に教師をしていた頃の同僚だ。酒ばかり飲み、教師業のうっぷんを晴らし、互いの恋愛を語った。あれから十数年、突然お見舞いに来たというとハヅキさんはどんな顔をするのだろう。
 エッセイの形をとった小説は本当の出来事のように感じるという川上さんの、本当に短い短編集です。

 (T.M)
『養老院より大学院  学び直しのススメ』 『紗央里ちゃんの家』
内館牧子/著  講談社

 「人生、出たとこ勝負」を座右の銘とする著者が、あることをきっかけに大学院へ入り、研究することを決意した。脚本家という、華やかな世界で活躍中の著者にとって、大学院合格というのが「出たとこ」であり、仕事を一切休んでまでもそれと「勝負」するというのが彼女の決断なのだ。
 本書は、受験勉強に始まり、卒業までの道のりが記されているが、それが著者にとって得がたい時間だったということが伝わってくる。
 著者は54歳で受験。老いの準備の前に、「学び直す」ということを考えさせられる一冊。

 (R.K)
矢部嵩/著  角川書店

 祖母が亡くなったという連絡を受けて向かった父親の実家。毎年訪ねていた筈なのに、今年は違和感が漂う。エプロンを血だらけにした叔母。その事を尋ねるとはぐらかしてしまう叔父。どこかがおかしい? というよりどこもかしこもおかしい。
 洗面所での不気味な発見をきっかけに主人公である少年の調査が始まります。見つからない従姉妹の紗央里ちゃんは何処へ行ったのか、始まりから終わりまで続く奇妙な雰囲気に惹きこまれます。

 (N.Y)
『そして、ねずみ女房は星を見た』 『打ちのめされるようなすごい本』
清水眞砂子/著  テン・ブックス 

 翻訳家、大学教授として活躍する著者にも、これまでの人生で心が萎え、なにもかも投げ出しそうな時が幾度かあったそうです。それを押しとどめたものは、物語を読むことを通して知った、さまざまな幸福のありよう、そして時間も空間も「いま、ここ」だけではないということ。
 例えばこの本の最初に登場する、そこつ者の「がちょうおくさん」も、表題作の「ねずみ女房」も、どこかちょっとかわっているけれど、あたたかく見守られながら、しっかり生きています。
 著者に「人生は生きるに値する」と教えてくれた子どもの文学作品のなかから、13作が紹介されています。

 (M.H)
米原万理/著  文芸春秋

 著者が、今年の5月に亡くなるぎりぎりまで書き続けられていた「私の読書日記」と、1995~2005年の間に著した何百にも及ぶ全書評を集めたこの本は、一冊で“米原万理”の生きかたが凝縮して読み取れるようになっています。
 ロシア語同時通訳の第一人者でもあった著者は、他国の文化と自国の文化を熟知した上でしか瞬時に言葉を表現できない通訳の作業を、他人の作品を自分の文章で表す書評にもあてはめています。
 ページをめくるたびに、次々と読書への欲求がわきあがります。

 (K.K)

 





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