『吸血鬼は良き隣人』 |
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『葉桜』 |
赤川 次郎/著 集英社文庫
最愛の人が癌になった時、自分ならどう向き合うのでしょうか。芥川賞作家の津村節子さんは、歴史小説家の夫、吉村昭氏の癌を宣告されました。もう助からないかもしれないと知り、看病に専念したいと思う妻でしたが、仕事の締め切りはいつも時間を奪っていきました。徐々に弱り、夫は自らの死を強く意識するようなりました。
この本は一年半にわたる吉村昭氏の闘病生活を、傍らで支えた妻と作家の両方の立場で描かれた小説です。癌の夫の側で津村さんは、小説を書く女は最低だと自分を責めました。
ふたりにしかわからない吉村昭さんとの最期の愛しい日々を綴った一冊です。
(T・M)
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橋本 紡/著 集英社
「アンパンマン」で知られるやなせたかしさんが、アンパンマンよりも古くから書き続けている「足みじかおじさん」。その作品が2009年4月、著者が90歳になった時に本になり、本書は前作に続く第二集になります。
“一篇3分以内で読めるので、インスタントラーメンに熱湯をそそいで待っている時にも読めます。おためし下さい。”とのメッセージ通り、この大人向けのショートメルヘンは気軽に読むことができます。
少しでも疲れた心を慰められれば…そんな著者の愛がたくさん詰まった一冊です。
(S・I) |
『偽りの来歴』 |
『峠うどん物語 上・下』 |
レニー・ソールズベリー/著 白水社
「正統な」吸血鬼の父クロロックと、人間とのハーフである女子大生の神代エリカ。
クリスマス間近のある日、サンタクロースに少女が殺される事件が起きた。そんななか突然隣人である川添知恵が、息子の幸男が警察にマークされていると、クロロック家へ相談にやってくる。幸男は半年前まで殺された少女・由子と交際していたこと、サンタの衣装でアルバイトへ行っていたことからマークされているという。エリカとクロロックは早速、事件解決に乗り出すが…。
シリーズ第5弾になりますが、ここから読んでも面白いですよ!
(M・Y)
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重松 清/著 講談社
職人気質の祖父、おしゃべりが好きで面倒見のよい祖母。そんな二人のことが大好きな孫のよっちゃんは高校受験を控えているにもかかわらず、祖父母が営む「峠うどん」へ足繁く手伝いに通っています。「峠うどん」の前には市営の斎場があり、立ち寄る客は通夜・葬儀の後、そのまま家に帰る気にはなれないという思いを抱える人たち。
うどん屋を舞台に、命の旅立ちに向き合った人たちの言葉や思いに触れ、「死」と「生」について、迷ったり悩んだりする少女の姿、そんな彼女を温かく見守る大人たちが描かれた連作短編小説です。
(Y・O)
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『アキバの帝王』 |
『映像の原則 改訂版』 |
新堂 冬樹/著 講談社
「K&Nコンサルティング」の社長、桐谷勝也。彼は盟友であり、自分の片腕として働いてきた名倉と共に、数々の企業買収を成功させてきました。
桐谷の次の買収先は、芸能プロダクション「パインプロ」。名倉をはじめ、まわりは猛反対しましたが、桐谷は買収を強行し、経営にまで乗り出します。
実は桐谷は、「パインプロ」所属のタレント中上愛美(ナカガミ マナミ)を秋葉原で熱烈に応援しつづけている、オタク軍団のリーダー「ラオウ」という別の顔をもっていたのです。
いつまでも、愛美を秋葉原のアイドルにとどめておきたくて、芸能プロの経営に乗り出した桐谷でしたが、愛美の口からは「メジャーデビュー」という言葉がとびだしてきたのです。その言葉を聞いた桐谷がとった行動とは?
(A・U)
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富野由悠季/著 キネマ旬歩報
技術の進歩によって、映像や動画に使われるデジ
タル技術もどんどん一般化してきています。2002年に出版されたものを、デジタル技術の現状に照らして改訂したのが、今回の『映像の原則 改訂版』です。
著者の富野さんは「機動戦士ガンダム」などの代表作を持ち、50年近く監督や演出を務めています。その経験から、映像を作る際に気をつけなければならない基本のポイントを、イラストを交えて説明しています。特にコンテ(コンテュニティ)に関しては、映像製作の設計図だと考えていることから、上級者向けの内容も収録しています。
映像製作者必読の1冊です。
(K・S)
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