『カタツムリが食べる音』 |
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『ビブリア古書堂の事件手帖 5』 |
エリザベス・ドーヴァ・ベイリー/著
高見 浩/訳 飛鳥新社
突然の原因不明の病に侵され病床生活を余儀なくされた著者。ある日、友人が療養中の彼女の元へ、鉢に植えられた野生のスミレと一匹のカタツムリを持ってきてくれました。
最初はカタツムリの存在に困惑していた著者でしたが、深夜にカタツムリが微かに何かを食べる音を耳にしたり、ゆっくりとしたペースで動く姿を見ることで、日に日に魅了されていきます。
一年間にわたるカタツムリとの生活は失意の中にあった著者に希望を与え、さらに生きる目的を見出すきっかけを作ってくれたのでした。その様子が鮮明に記されています。
(Y.O)
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三上 延/[著] KADOKAWA
北鎌倉にあるビブリア古書堂には多くの古書と共に古書にまつわる謎が運び込まれてきます。
今回、ビブリア古書堂に持ち込まれた謎の古書は、「彷書月刊」。鎌倉近辺の古書店に「彷書月刊」を売りに持ち込んでは買い戻す女性が、ビブリア古書堂にもあらわれます。
この謎にはビブリアの顔なじみ、志田の秘密がかかわっていたのでした。
その他には手塚治虫の「ブラックジャック」に隠された夫婦の思い出を見つけ出します。
古書がつないだ人と人との思い出やつながりを感じ、本をまた好きになれる一冊です。
(A.U)
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『あなたへの歌』 |
『Discover Japan DESIGN vol.3 目利きが選ぶ メイドインニッポン』 |
楊逸/著 中央公論社
中国人の華明月が留学先の日本で恋愛し、結婚して母親になるまでを描いた小説です。
中国では結婚相手として男性に見てもらえない28歳になっても一向にプロポーズしてくれない彼氏にいらだちます。
念願の結婚が決まると彼は、仕事を辞めて自分の転勤先についてこいと言いますが、中国では専業主婦=能のない女を意味するので踏ん切りがつきません。中国の地元では離婚が流行し姉も友人も離婚してしまいます。
主人公は幸せな結婚生活が送れるのでしょうか?
(N..K)
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枻(えい)出版社
日本の古き良き伝統工芸は、時代とともに形を変えながら今もなお生き残っています。
この本は、全国の目利きの店主による選ばれた品を紹介しています。
竹籠・机・器・タオル・洋服・靴・鞄など、さまざまなメイドインニッポン。一見、どこにでもありそうですが、職人が素材選びからこだわり抜き、使い心地も計算され手作業で丁寧に作られた品は、どれも、何とも繊細で美しいオーラを放っています。
お気に入りを見つけたり、目の保養にも最適な一冊です。
(A.M)
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『ミッドナイト・バス』 |
『敗者の日本史9 長篠合戦と武田勝頼』 |
伊吹 有喜/著 文藝春秋
東京で挫折し、故郷で夜行バスの運転手をしている利一。50歳を目前にした彼には、心を通わせる女性がいるが、ある日運転するバスに、偶然別れた妻が乗車する。今は再婚したその妻は、身体の不調や親の介護、夫との不仲に苦しんでいた。
仕事を辞め実家に戻った息子も、夢と結婚の間で揺れる娘もまた、心の傷を抱え行き詰っていた。
一度壊れてしまった家族のために、利一は今こそ向き合おうとする。
暗い夜を走るミッドナイト・バスが終点に着く頃、夜が明けるように、皆がもう一度自分の一歩を踏み出す、再生の物語です。
(T.Y) |
関 幸彦 山本 博文/企画編集委員
吉川弘文館
武田勝頼という名前を聞いてどんなイメージが湧きますか?
武田信玄の子であり、長篠合戦において織田・徳川連合軍による鉄砲の多段撃ちに無謀な突撃を繰り返し、武田家をつぶした愚かな後継者と言われる方もいらっしゃることでしょう。
しかし、本当に愚将だったのでしょうか?
当時、鉄砲に対し騎馬隊による突撃戦法は普通の事であり、長篠の合戦以後も1万3千人以上の兵を集め信玄以上の領土を有した武将です。
本書では、多くの史料を基に勝頼の出生から滅亡までを再検証、新たな武田勝頼が紹介されています。
(Y.E)
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