『ペコロスの母の玉手箱』 |
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『日米野球80年史』 |
岡野 雄一/著 朝日新聞出版
認知症の母の介護を、息子の目を通して8コマのイラストで描いた前作「ペコロスの母に会いに行く」は話題となり、映画化され、昨年「キネマ旬報ベストテン日本映画」第1位に輝きました。本書は、その後母が亡くなるまでの日々を綴っています。
現実と思い出のはざまで漂う母の心を「玉手箱」と呼び、胃ろうをするかどうかの選択に悩み戸惑いながらも、寄り添う息子は、母の一言で記憶がよみがえるひと時を芳醇だと言います。
命の優しさと切なさ、そしてあたたかいユーモアに満ち、ほのぼのとしたイラストと長崎弁がおだやかに心に沁みてきます。
(T.Y)
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ベースボールマガジン社
1934年、ベーブ・ルースが来日し、日本プロ野球創設のきっかけとなった日米野球戦から80年が経ちました。日米野球史に残る名選手や秘話を余すところなく収録した一冊が登場しました。
誰もが知るスター選手同士の対談、日米野球戦の歴代ポスターなど、野球ファンはもちろん普段あまり野球を観ないという方でも楽しんで読めることうけあいです。日本で生まれた幻の魔球「キモノボール」の記録は思わず微笑みがこぼれます。
数ある記録の中でも、“野球の神様”ベーブ・ルースと、そんな彼から三振を奪った伝説的投手・沢村栄治の逸話は大きく取り上げられています。日米野球史に輝く彼らの偉業を紐解いてみましょう。
(S.S)
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『しょっぱい夕陽』 |
『日本懐かし自販機大全』
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神田 茜/著 講談社
5つの物語の主人公たちは、妻に浮気され、自信をなくす夫や、息子のサッカーチームのコーチに恋する母など、48歳の年男と年女たちです。
『バナナの印』の主人公、土田は、目つきが悪いのをカバーするために駄ジャレを身に付けた会社員。離婚し、本社から倉庫勤めへ異動させられます。元同僚からもらった毛糸がきっかけで編み物を始めてみると―。
40代は、それまでの人生を振り返ったり、立ち止まって考える年齢だと言われています。経験を積み、生きることのしょっぱさを知る主人公たちの物語が、講談師でもある著者の温かな眼差しを通して描かれています。
(H.Y)
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魚谷 裕介/著 辰巳出版
日本の食品自販機は昭和46年以降に生産が本格化しました。高度成長期を遂げ、豊かさと便利さを追求してきた時代の産物で、その存在は大人にとっても子どもにとっても夢のマシンでもありました。
しかし、家庭への電子レンジの普及やコンビニが当たり前になった昨今では、食品自販機の需要は減り、次第に忘れ去られ、その姿がなくなっていっている状況です。
そんな中で、著者が懐かし自販機巡りをし、全国各地を旅して出逢ったたくさんの「レトロ系フード自販機」とその設置施設などを紹介しています。
(Y.O)
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『パスティス~大人のアリスと三月兎のお茶会~』 |
『ウドウロク』 |
中島 京子/著 筑摩書房
今年、自身の代表作『小さいおうち』が映画化され話題となった著者。新作はパスティーシュ小説集。
パスティーシュとは作品の模倣という事。著者が今まで愛読してきた太宰治や吉川英治、ドイルやケストナーの作品に敬意を表しながらその作風を模倣し、著者の手で各作家の作風をいかした別の作品として生まれ変りました。
同じ人が書いたとは思えない、作品ごとに全く違った印象が持てる短編集に仕上がっています。
(A.U)
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有働 由美子/著 新潮社
NHKの朝の番組「あさイチ」の司会でおなじみ、年末の紅白歌合戦の司会も務める有働由美子アナウンサーが綴った、初のエッセイが登場しました。
“40代女性のひとりごと”をテーマに掲げ、なんと「わき汗」という衝撃のタイトルで幕を開けます。
男社会で生きている人だけあってサバサバしていて、どこか近寄りがたい雰囲気のある有働さんでしたが、この本を読んでみると印象が変わり、とても身近な人に思えてきます。情に脆く笑いあり涙あり、人間臭い有働さん、とっても素敵です!
(A.M)
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