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平成16年新春号

・歴史に学ぶ 
・実記をさげて米欧を歩く ~『米欧回覧実記』と久米邦武~
・郷土の本 『古賀和夫画集』
・新春飾り詩碑建つ 片岡繁男の詩刻んで
・絵本作家講演会のお知らせ
・寄贈 ありがとうございます
・祝 めばえの日(お知らせ)

★ 1面
歴史に学ぶ

 12月7日、「実記をさげて米欧を歩く」という演題で、北海道大学名誉教授の田中彰先生の講演会を行いました。戸外は初冬の冷たい風が吹いていましたが、図書館ホールは超満員の参加者で熱気に溢れていました。田中先生の話に「そうだ、私も同感だ!」と思わず膝を叩いた人もいたそうです。(参加者の一人、福田千枝子さんから感想をいただきましたので次ページに掲載しております)

 明治初年、米欧12ヵ国を回覧した岩倉使節団は、日本近代国家創出のため、今後進むべき道のモデルつまり選択肢をそれらの国に求めましたが、「米欧回覧実記」はその報告書であり、編著者は佐賀県出身の久米邦武でありました。
その後、近代日本は国のあり方をドイツつまり当時のプロシャにならうという選択をし、植民地をアジアに求めるという軍国大国路線を突き進み、その結果昭和20年の敗戦を迎えました。しかし、「米欧回覧実記」は大国のことだけでなく、スイスやオランダ、デンマークなどの小国についても詳しく記載していたのです。久米の報告によれば、小国が大国の間に介在して自主を全うすることができるのは、その国民性が「強剛」で生業に励み、国を愛し「不撓ノ精神」をもって「自主の気概」に富んでいるからにほかならない、と記しています。

 田中先生は、陸軍士官学校の士官候補生として敗戦の日を迎えられました。それは先生にとっては衝動的で重いものであり、そこから歴史研究が始まったそうです。「歴史に学ぶといいますが、近代日本が歩いてきた道を、いま私たちはどう捉えなおすべきか」と先生は私たち参加者に語りかけられました。

 国際アンデルセン賞受賞者で国際的にも高い評価を得ている画家の安野光雅は「青春の文語体」という近著の中で「米欧回覧実記」を取り上げ『紀行文としてみれば、あれほどの記録は世界に例をみない』といい、『古典を捨てる国に未来はない』とも言っています。私もこれを機会に「実記」を読みながら、久米が報告しているフィラデルフィアをはじめとする19世紀の世界の図書館の旅を始めようと思っています。

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★ 2面(1)
実記をさげて米欧を歩く ~『米欧回覧実記』と久米邦武~

 久米邦武とは作家・泉三郎氏の『映像で見る-岩倉使節団の米欧回覧・佐賀藩士久米邦武が見た世界』(平成8年6月 アバンセ)で初めて出会いました。邦武の偉業を知らされた私は、すぐに岩波文庫5冊に収められた『米欧回覧実記』を求めたものの、いつしか本棚の隅で埃をかぶるにまかせておりました。

 再会できたのは、犬塚館長さんの思いが、久米邦武研究の第一人者・北海道大学名誉教授・田中彰先生を動かし講師としてお迎えできたからです。また事前に前山先生のご指導を受けることもできて、すばらしい学びの場で知的興奮に浸ることができました。(平成15年12月6日 伊万里市民図書館)

 『実記』を読んで久米邦武の業績を真に理解しようとして、私は今老眼鏡をずり上げ、ずり上げ取り組んでいるところです。『実記』は明治4年11月から1年10ヶ月間、米欧12カ国を歴訪した岩倉使節団で記録係を担当した久米邦武がその行程のすべてを記録し、彼自身の考察も加えたものです。漢学者であった彼の文章は片仮名まじりの文語体で難しい漢字が多く、最初は辟易しましたが、簡潔で格調高い名文を朗々と声をあげて読む爽快さを味わっております。

 驚いたのは、初めて出会った西洋文明にもたじろぐことなく、出来事や印象を批判も交えて、こと細かに記していることです。それに行間から湧き上がってくる使命感-わが国の近代化を推進するための選択肢をどう求めるか-に120年前の人々が国づくりにかけた情熱を偲び感動しました。

  『実記』に示された邦武の博識や科学精神は、名君・直正公の薫陶によるものと言われますが、当時の佐賀藩が彼をはじめ多くの人材を擁していたことを思い、これらの人々が日本の近代化に果たした役割の大きさを思うとき、同じ佐賀の地に生を享けたひとりとして誇らしさを覚えます。

 終わりに、田中先生がその講演を締め括られたことばを紹介します。
 『実記』はベルギーやスイスなどの小国が「19世紀後半の世界情勢の中でいかにして独立を保ち得ているのか」に関心を寄せ、それは「国民の自主・自立への気概によるものである」ことを看破している。小国主義のはしりがここに在る。日本国憲法も小国主義であるが、改正への動きがある。今こそ『実記』を読み直してこの国の在り方を考えるべきではないか…と。

 熱く語られたそのことばは"蒙を啓かれた"思いで深く心に残されました。辛うじて平和を保っているこの国の行方についての大きな示唆をいただいたように思えるのです。                              
(福田 千枝子)

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★ 2面(2)
郷土の本 『古賀和夫画集』(古賀和夫/著・発行)

 高校の美術教師の傍ら、絵画の制作にも精力を注ぎ、四半世紀の教員生活にピリオドをうたれたその後も、なお一層活躍をされている伊万里市在住の古賀和夫先生の絵画作品集です。
 郷土の風景を描くうちに、いつしかそこに住む人々の姿がカンパスの中に加わっていったそうです。白壁土蔵の町並み、海岸通りをにぎわせる朝市の様子、そして伝統芸能の浮立など、静閑な作品の中に人々の息づかいが伝わってきます。
 作品を通して、古賀先生の歩んでこられた絵の世界に触れるとともに、伊万里の人々や文化の歴史を知ることができる画集です。

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★ 3面
新春飾り詩碑建つ 片岡繁男の詩刻んで
 伊万里市民図書館玄関前


 伊万里市民図書館の正面玄関前の外庭に、昨年末、伊万里市出身で東京在住の詩人、片岡繁男の詩碑が建ち、いま新春の光を受けて図書館の気韻と響き合い、静かに詩情を醸し出しています。

 片岡はふるさとの伊万里を愛し、伊万里のために数多くの美しい詩を残した人です。その片岡に師事して、同じく文学の道を歩んだ伊万里市内の文学同人・十三日会の会員(六人・野田行雄代表)たちが、片岡の詩魂をこの地に刻み、また彼の詩が多くの人たちに広く親しまれ、豊かな心の糧ともなることを願って、この場所を選んで詩碑を建てました。

 詩碑は高さ約1.6メートル、幅約2メートルの自然石に黒ミカゲの碑板をはめ込み、片岡の自筆による詩11行を金文字で刻んでいます。

  目をつむると川がある
  はるの鳥が
  羽づくろいつつ
  とび立って
  光をこぼち
  そのひかりの輪のなかで
  わたしの
  愁いのない日々はつづき
  それら幼いものに
  からたちの花が咲き
  川はきらきらと流れる

 この詩は、伊万里市が昭和54(1979)年の市制25周年記念事業として、市の歌「交響詩伊万里」の制作を計画したとき、頼まれて、片岡が精魂込めて作詩した長編詩『わがふるさと伊万里』の冒頭の一節です。この序章部に続いて、片岡が幼少のころからの自然との交流、さらには成人しての思索の遍歴、その果てに知った自然の織りなす美しさや、はかり知れぬ恵みと、それへの畏敬の思いが歌い込まれ、最終章は"この山河―伊万里よ"と、高らかにふるさ伊万里をたたえる交響詩の絶唱部となるのです。

 「交響詩伊万里」の作曲を担当した團伊磨も「これほど郷土を愛し、選びぬかれた言葉の詩を知らない。私も感動の中で作曲した」と言っています。
 ぜひ詩碑の前に足を止めてご覧下さい。この詩の全文は、この図書館にもある片岡の詩集『川の子・太郎の歌』に収録されています。ご一読いただければ幸いです。(文中敬称略)
(十三日会同人 井手和夫)

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★ 4面(1)
絵本作家講演会のお知らせ

 「おとうさんはウルトラマン」や「にゃーご」でおなじみ

 みやにしたつや さん
 ★ 日時 平成16年 2月1日(日) 14:00~15:30
 ★ 場所 伊万里市民図書館ホール
 ★ 演題 「ウルトラパパの絵本と子育て」




 じゅげむ じゅげむ ごこうのすりきれ…
 「まんじゅうこわい」「じゅげむ」など落語絵本がヒット中の

 川端誠 さん
 ★日時 平成16年 3月21日(日)
 10:30~11:30 絵本ライブ(対象:親と子)
        …作者自身がおもしろく開き読み
 
 14:30~16:00 講演「絵本とともに旅をして」
 
★場所 市民図書館ホール

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★4面(2)
寄贈 ありがとうございます

  前田和茂 
  塩川順一
  木須武子
  松尾 香
  福島明寿
  野田行雄
  小副川美智子
  福島 徹
  森田一雄
  徳永章二
  高森 保
  前山 博
  副島洋見
  山口萩月
  吉武正美
  金崎洋典
  池田隆司

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★4面(3)
祝 めばえの日 2月29日(日)

 平成6年2月26日図書館の起工式には大勢の市民が集い、ぜんざいでお祝いをしました。この時のよろこびを忘れないようにと毎年、図書館フレンズいまりから来館者へぜんざいがふるまわれます。今回は上記の日程です。詳細は館内のお知らせをご覧ください。

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